WEBメディアを成長させる「編集長」というお仕事。~ベーシック 執行役員 ferret創刊編集長 飯髙悠太様~

飯髙 悠太(いいたか ゆうた)。株式会社ベーシック 執行役員。
Webマーケティングメディア「ferret」の創刊編集長を務める。これまで広告代理店、制作会社、スタートアップを経験。複数のWebサービスやWebメディアの立ち上げに関わる。2014年4月ferretメディア化にあたり参画。

 

 

編集長・飯髙悠太

 

 

[松本] 今回のゲストは、株式会社ベーシックの飯髙さんです。飯髙さんはWebマーケティングメディア「ferret」の編集長を務めておられます。

 

今回は「自社でオウンドメディア始めるにあたり編集長を担うことになりまして、さて具体的に何すればいいんでしょう?」という人に向けて、編集長というお仕事のお話を聞きたいと考えています。それにピッタリなのが飯髙さんだと思って、声をかけさせていただきました。

 

[飯髙] 事前に質問事項読みましたけど、テーマが奥深いんですよ。準備が凄く大変。結果できてないけど(笑)。

 

[松本] 1月に執行役員に就任されたと聞きました。おめでとうございます。もう編集長という役職は降りられたんですか?

 

[飯髙] いえ、続けていますよ。例えば、最近ちょっと更新できてないんですが、オイシックスのCMOの西井さんとやっている定期連載は、僕が現場に出て原稿も書いてます。ただ編集という作業はもう殆どやってないですね。原稿のチェックや大枠の決定は、毎週月曜日に編集メンバーの打ち合わせがあるので、そこでチェックしています。

 

[松本] なるほど。いろいろとお話をお伺いしていきたいのですが、その前に、まずは簡単に自己紹介をお願いします!

 

[飯髙] 今に至るまでのキャリアをお話しましょうか。

 

僕、大学のときは何もしてなかったんです。授業受けるより競馬新聞読んで、昼間からお酒飲んで、あとはバイト漬けの毎日。いざ就職となったとき、なんとなくITかっこ良く見えて、他の業種業態より歴史が浅いから色々整備されていない点が多く見えて…ってことは勝てる要素があるなと思って(笑)。それでITばっか受けてたんですよね。今考えたら、ほんと何もわかってない小僧ですよね。

 

[松本] 就職活動されていた時期は2008年ですか? リーマンショック直撃世代ですね。

 

[飯髙] ですね。実は「リーマンショックが来た!」と分かって、内定式の前日に「内定辞退します」と会社に電話したんですよ。なぜなら、ITをやりたかったものの大学生活で何もやってなかったので、セールスしか僕には選択肢が無かったんですよね。

 

で、リーマンショックが起きたから「世の中の雇用は変動する。だから人材系に行くべきだ」と考えたんです。カッコよく言えば、一番辛い場所で営業経験をすることが成長の最大の近道だと思えたんですよね。そんな感じで秋採用探したんですけど、全然見つからなくて(笑)。リーマンショックまじでやべぇ、って思いました(笑)。

 

今まで言ったことないんですけど、ようやく見つけた1社目は歴史が50年ぐらいある紙媒体の人材系企業でした。僕が入る前年からマイナビと提携をしていてインターネット媒体も売るという話だったので、てっきりその部署に所属されるのかと思っていたら、紙媒体売ることになって(笑)。新聞広告も折り込みも売りました。1年は揉まれて強くなろうと、1日150件の飛び込み営業もしました。

 

[松本] それはメンタル鍛えられますねー…。

 

[飯髙] ある大手小売企業に2ヶ月間毎日のように飛び込み営業していたことがあります。受付前でたまたま通りがかった人に話かけたら、その人が人事部長だったんですよ。僕が名刺出したら向こうが「お前のこと知ってる」と。社内で有名になっていたらしく「お前また来週来い」と言ってくれたんです。行ったら、今まで渡していた名刺を全部持っていてくれたんですよ。僕、毎回名刺にメッセージを書いてたのですが「俺はこのメッセージでお前のこと知ってるから、何をやりたいか言え!」と。

 

[松本] そんなドラマみたいなシチュエーションあるんですね。

 

[飯髙] 「トップ連れてこい!」と言われていたんですが、あえてトップを連れて行かなかったんですよね。「そういう意気込みも好きだ」と褒められて。それで、人材業界では大型の案件受注できたんですよ。それで「よしやり遂げた!」と思って、結果半年で辞めました(笑)。

 

次に広告代理店のクラッチに移りました。最初はリスティング広告とか売りましたね。

 

[松本] 方向ガラリと変わりましたね!

 

[飯髙] リスティング広告以外にFacebookページの制作・プロモーション支援もしていて、その仕事を通じて「ソーシャルの時代が来た!」と実体験も含めて感じましたね。

 

その当時、ソーシャルの領域でビジネスとして活動している人が少なかったので「ユーザーとしてTwitterもFacebookもかなり使ってたからビジネスチャンスはある!」と思って、ハイベロシティに行ったんです。ハイベロシティでは、超大手企業のソーシャルマーケティングをコンサルティングさせてもらったりしました。いろんな会社でいろんな事業を経験させてもらいましたが、僕自身を一番成長させてくれたのはハイベロシティだと思っていますね。

 

[松本] 何があったんですか?

 

[飯髙] たかが25歳とかで超大手企業のコンサルティングって、そうできないですからね。あの当時、ソーシャルに関する知識があったってことで、そういった企業と関わることができました。ソーシャルでは僕の方が知識も経験もあったけど、それ以外に関してはむしろ色々教えてもらいましたね。

 

あと、クラッチに在籍していたときにオウンドメディアを立ち上げているんですが、その知見をもとにハイベロシティでもオウンドメディアを立ち上げて、結果的に月80万PVぐらいまで伸びたんですよね。コンサルティングの依頼を受けたのも「Facebook広告」というキーワードで1位を獲得していた記事からの問い合わせなんです。記事を書いた当時はSEOのことなんか何もわかっていませんでしたけど。

 

 

 

 

この頃から「メディアをやってみたい!」という気持ちが強くなりましたね。メディアってマーケティングの手段の積み重ねだと思うので、それまで色々経験したからこそメディアやりたいと素直に思えましたね。

 

[松本] しかも「0」から。

 

[飯髙] そう。そんな時、ベーシックの代表の秋山が「こういう人材が欲しい」というのを探す飲み会に呼ばれたんですよ(笑)。そこで「中小企業のマーケティングの課題はやばすぎる。これをメディアで解決したい。だからferretをこういう風にしたい」と口説かれたんです。メディア事業に自分の100%を出し切れそうだったので、入社を決意しました。それが2014年の4月ですね。

 

[松本] 会社を移るに従い、Webメディアに関わる比重が少しずつ高まっていますよね。キッカケや成功体験があったからですか?

 

[飯髙] 自分のブログを運営していた時に「メディア楽しいな」と思ったことはあります。2012年にFacebookページがタイムライン化されるという情報を日本で最初に記事化したのは僕なんですよね。これがヤフーニュースにまで上がったんです。2日間で数万いいね獲得しました。サイトはWordPressで作っていたのですが、クソしょぼかったので、もうずっと落ちっぱなし(笑)。この記事読めねーって言われて(笑)。で、それがRTされてまたバズが起きる。こんなに来るんだ!という驚きとその反応を知るのが楽しいな、とは思いましたね。

 

 

「編集長」は具体的に何をする人なのか?

 

 

[松本] では本題の編集長というお仕事について、内容とか考えについて伺いたいと思います。いまferretって立ち上げ2年ちょいで月間270万PVでしたよね?

 

[飯髙] そうですね。2014年9月に立ち上げて2016年12月時点で月間270万PVです。2016年6月から10月ぐらいまで今までの成長曲線が鈍化していたんですが、その分だけまたストレッチしてますね。

 

[松本] 今、一番何が楽しいですか?

 

[飯髙] 色々ありますけど、やっぱりGAのリアルタイム分析の数字を見ている時かな。ferretは17時にメルマガを配信するんですけど、ふっと見たら「700!!」みたいな瞬間はたまらなく好きですね(笑)。リファラーを調べて「ソーシャル上で話題として上がった」「ヤフーで取り上げられてた」みたいな分析をするのが好き(笑)。あとは記事広告を公開してクライアントから「こんないいとは思ってなかった」という声が聞けた時は気持ち良いですよね。

 

[松本] 3年間、立ち上げのタイミングからずっと編集長ですよね。立ち上げのときって、仕事の進め方、段取り、どれくらい大変でしたか?

 

[飯髙] 最初はもう覚えていない…(笑)。何していたか覚えてないぐらい色々してましたね。僕が入社した2014年4月って、5月末にferretをリリースするぞ!って状況だったんですね。プロジェクトとしては半年ぐらい前から動いていて「僕らのターゲットはこれだよね」というのも決まっていたんですが、実際の成果物見てみるとWordPressでオシャレに作っている。いや、違うだろ!って(笑)。

 

コンテンツも幾つかあったんですけど、僕らのコンセプトは「Webマーケティングはこのferretを読めば50点はわかる」ことだったのに、用意していたコンテンツが全部「点」だったんですよね。カリキュラムのように「線」で構成されていない。このメディアにはストーリーが無いと思って、僕が最初にやった仕事は今あるものを全部捨てようと決断することでしたね。

 

 

 

 

[松本] それ、すごく勇気いる決断ですよね。

 

[飯髙] 超怖かったですよ。そのときはまだ立ち位置は一般社員で編集長でしたから。部長もいましたからね。そこで、このメディアをするには僕しか適任者はいないと社長に直談判して、全部の権限くれって言ったんです。それが5月半ばぐらい。今この状況でリリースしても絶対に伸びない!と思っていましたから。だったら、ちゃんとやり直して、リリースを遅らせてでも先が見えるものを作ろうと訴えました。コンテンツも最低限は線で読めるようにして、半年遅れでリリースしました。

 

[松本] どのようにコンテンツを「線」として作っていたんですか?

 

[飯髙] 例えばSEOを理解するには、最低限押さえておくべき流れがあるじゃないですか。最初にSEOに関する資料を網羅的に作るんですよね。次に、その資料をベースに大枠を構成して、どこで章切りをするか決めるんです。それができて初めてh4レベルの構成を作っていく。完成したら、ようやく執筆を始めるんですよ。

 

当時のレギュレーションは僕が作っていたので「この通りに書いて!」と指南しました。コンテンツが上がってくると、それを編集してライターにフィードバックして…というのを半年間ずーっとやってましたね。

 

[松本] 9月にリリースされてから、「あ、これいけるかも?」と思われるまで、どれくらいの時間かかりましたか?

 

[飯髙] んー…初めて3ヶ月ぐらいですかね。最初の課題はコンテンツが読まれないことだったんです。僕はソーシャル周りは色々と知識と経験があったので、僕なりに考えた記事は1万PVくらい獲得するんですよ。でもメンバーは取れない。

 

そういう状況が続いていたんですが、年末にあるメンバーが書いた記事が1.5万PVぐらい獲得したとき、彼らの思考がちょっと変わったんですよね。そのときに、これはいけるかもしれないと思うようになりました。

 

[松本] そこから成長が続くわけですね。メディアの立ち上げ期は、各社苦労されていますよね。

 

[飯髙] 最初はソーシャル上で、いろんな人にいかに触れるかを重視していました。ソーシャルのトラフィックを集めるとリファラルが引っ張られる。それが続くといつの間にかダイレクトが増えるんです。「このコンテンツは良い」って認識されるようになるんですよ。僕らは、コンテンツをいかにWebマーケティングのカリキュラムに誘導するか考えていたので、この流れを強化することで、読者が増える、会員が増えるという構図はできあがっていきましたね。

 

PVが取れればいいってものではないですし、大した指標ではないと思いますが、結局1年で150万PVに到達したんです。僕は1年で100万PV行くって宣言していたんで、プラス50万ですよね。リリースが半年遅れましたけど、その分カバーしたぜ!って思ってます。社長はちげーよって言いそうですが(笑)。

 

[松本] 完全に離陸するまでは、いかに人の目に触れさせるか含め、飯髙さん自身が色々と動かれてたんですね。

 

[飯髙] やってましたね。というか、去年の4月ぐらいまで僕自身かなりプレイヤー寄りでしたからね。立ち上げて1年半は、僕が目を通すまでコンテンツは上げないって決めていましたからね。

 

[松本] 順調にメディアとして拡大していると思うのですが、人数も同じように増え続けているんですか?何かキッカケのようなものがあったのでしょうか?

 

[飯髙] 最初は5人とかで今は10人でやってます。内訳としてはメディアが3人、セールス1人、新規事業1人、エンジニア3人、インターン1人と僕です。増えるべきして増えた気がします。

 

 

 

 

2015年のタイミングで新卒1人がメンバーになったことがキッカケですね。今は独立して沖縄いるんですけど。最初、何も知らない子だったんですけど、4ヶ月みっちり教育したら立派な1人前になったんですよ。ライターはなかなか育たないと思っていたんですが「育つもんなんだ!」と気付いて、だったらもっと人増やせばトラフィック取れるなと考え方を変えたキッカケですね。って言っても、もう1人福島で独立したので、結果メディアのメンバーは増えてないんだけど(笑)。

 

[松本] 3年間を振り返られて「編集長」という仕事を定義すると、どう表現されますか?

 

[飯髙] 一番は「メディアとしてどうありたいか」を考え続けること。次に、分かりやすい言葉で言えば「率先垂範」かな。率先して前に出て、自分が引っ張るという行為は編集長こそやらなきゃいけないと思いますね。あともう1つは「事業推進」ですよね。会社と一緒で、新しいプロダクトを立ち上げる時は事業を引っ張る人が絶対に必要だと思う。

 

僕ってみんなを巻き込みながら走るって行為が苦手で、勝手に突っ走るんですよ(笑)。僕が突っ走ると、その後ろをメンバーがついて来てくれる。この3年間は勝手に走り続けた3年間でしたね。

 

[松本] 後ろから付いてきてくれるメンバーには、見たことの無い景色を見せ続けないといけないですよね。同じ景色ばかりじゃ飽きが来ます。常に好奇心を持たないと、走り続けられないですよね。

 

[飯髙] 単純に好きなんですよ。いろんなことをやりたいタイプなので、メンバーはしんどかったとは思います。メンバーは「マジ勝手に走ってる!」と言ってますからね(笑)。

 

[松本] 勝手に走っていたら「勝手にやってろ」という声も上がりそうです。

 

[飯髙] もちろん、そういう時期もありました。最初は特にそうでした。メンバーの半分以上は僕より年上で、入社したての新人がいきなりマネージャーになったら、周囲は良い顔しないですよね。でも、それは成果を積み重ねるしかないんですよ。勝手に走るけど、あいつは数字を上げる、それで納得してもらうしかない。だから、成果を出して周囲がYESという状況を作るしかないです。

 

それと勝手に走ってるとは言え、好き放題走 一番は「メディアとしてどうありたいか」を考え続けること。次に、分かりやすい言葉で言えば「率先垂範」ってるわけではなく、メディアとしてありたい状態を目指して走ってますからね(笑)。

 

 

「良いコンテンツ」とは何か?

 

 

[松本] コンテンツ作りのお話を聞こうと思います。

 

[飯髙] 出た、また難しい話(笑)。

 

[松本] 「良いコンテンツを作ればユーザーにも検索エンジンにも理解される」と皆さんは努力されています。でも「良い」ってどういう定義なの?という議論は必要ですよね。人によって「良い」は違うわけです。ferretでは、どのようにして良いコンテンツ作りをされていますか?

 

[飯髙] 2つ考えないといけないですよね。1つは「コンテンツ」の中身の定義ですよね。これは出会いの場で定義が違うと思うんですよ。例えば、検索でコンテンツに出会う場合は、何かしらの課題感があって調べているので、ターゲットユーザーが読んで、それで解決できるものっていうのが、良いコンテンツだと思います。

 

もう1つが「コンテンツ」の拡散性。例えば、自分が言いたいことを代弁してくれるコンテンツって良いコンテンツだと思うんですよ。ここは、色んな切り口があるんですよね。だからみんな迷っちゃうのかな。

 

ドライに言うと、僕は読まれないコンテンツは意味がないと思ってます。どんなに良いコンテンツだったとしても、こんだけ情報量が増えている世界で出会いが創出できないコンテンツは価値がないと思っています。そういう意味では、出会いを創出できるコンテンツを重要視してますね。

 

[松本] コンテンツを載せるメディア選びが重要ってことですか?

 

[飯髙] ソーシャルメディアも含めたプラットフォーム上でユーザーがどう情報と出会い、何に喚起されてクリックをするかが、すごく重要だと思っています。

 

グーグルだったら検索窓叩いてタイトルが並ぶときに、自分たちの記事がどうあればその中からユーザーに選ばれるのか。Facebookであれば画像が載せられる、でもテキストはあんまり見ないから僕らは画像にテキストを載せる。TwitterであればTwitterカード入れる。そういう当たり前のことを僕らは凄い気にしていますね。出会いの創出はプラットフォームが正しいと思っていることに正しく向き合うことが一番大事ですよね。

 

ちなみにferretの場合、分かりやすく丁寧な解説、読者が気づいていなかった本質を拾う、この2つが良いコンテンツの定義です。ライターの仕事をこのポリシーに照らし合わせて定量的に評価することはできないですけど、これは頭の中に入れてコンテンツを書くことが大事だよ、と言っています。

 

[松本] 書くときの指針にできるものが、どんな内容であれ良いコンテンツを生み出すんでしょうね。

 

[飯髙] 例えばインタビューをして、内容自体が面白かったとしても、自分たちの読者には合わないことがあります。自分たちの読者に向けてどう咀嚼するかというときに指針は大事なんですよ。誰のためのコンテンツか?という目線が欠けたら、面白いのに読まれないコンテンツになりますよ。

 

[松本] 良いコンテンツがすごくバズるとも限らないですよね。バズれば良いですが、奇をてらって炎上することもあります。より多くの人に読んでほしい、あわよくばバズって欲しいというときに、ここだけは意識した方が良い点ってありますか?

 

[飯髙] バズは狙って確実に起こせるものではないですからね。めちゃめちゃ再現性もってる方もいますけど、それこそがノウハウですし。例えば最後に答えは与えず、自分で答えを出す終わり方はバズりやすいコンテンツかなーという感覚がありますね。ferretはそういう書き方はできないんですけどね(笑)。

 

[松本] オウンドメディア立ち上げたばかりの企業の場合、最終的に資料請求に繋がれば良いんですけど、いきなりそんな結果を残せるとは限りません。立ち上げ期間は絶対に必要です。でも、中間の成果として「ソーシャルの反応を獲得せよ」と言われると、それなら記事1本でやれそうだと考えがちですし、できればバズりたいと考えると人は多いようです。

 

[飯髙] 共感としての指標なら代替できますからね。ただバズって何がしたいのかって定義がないとダメですよね。それと資料請求に繋がることって大事ですけど、ユーザー行動として記事読んですぐコンバージョンするのか?とか考えないといけないですよね。そう考えるともっと手前の層に知ってもらうとか、再訪してもらうようなコンテンツにするとか、状況によって変わります。つまりオウンドメディアの役割をしっかり考える必要があります。

 

[松本] 最近フェイクニュースって話題じゃないですか。聞き心地が良いコンテンツはバズりやすいですよね。この前に公開した生産性の記事(「日本の生産性は先進国に比べて低い」という数字を疑って見る)が少しバズったのですが、RTしている人ってTwitterのアイコンが日の丸だったり、逆にdisっている人は「アベ政治を許さない!」と言っている人だったり。あー、タイトルだけ読んでるんだろうなって思いました。

 

 

 

 

多くの人が望んでいる記事を提供することは大事なんですが、超えてはいけない一線を越えるパターンが増えてきましたよね。

 

[飯髙] プラットフォームは今の時間軸を気にさせないように動き始めていますよね。グーグルがAMP対応したり、FacebookがInstant Articles始めたり、Amazonがエンタメやったり。この時代の流れは加速して、本質的な記事が評価される時代がやってくると思うんですよね。そういうバズ目当てのフェイクニュースは、今しか捉えていないんですよ。将来的なことを見ていない、時間軸の無いメディアは自然と衰退すると思います

 

ただこの考えはあくまでferretをやっている僕の意見です。なぜならferretのテーマは「狭く、深く」だからです。そして課題をもったWeb担当者がメインターゲットなのでこれが言えると思っています。

 

 

「良いコンテンツ」を見つけてもらうために努力すべきこと

 

 

[松本] 良いコンテンツをどうやって見つけてもらうか、各社すごく苦労しています。

 

SEOやりましょう、広告出しましょう、メルマガ送りましょう、色んな施策あると思うんですが、ferret立ち上げ時って、コンテンツを見つけてもらうためにどのような取り組みをされていたんですか?

 

[飯髙] 会社がやるべきことと、個人ができることがあると思っています。僕らはこの両軸をしっかり回そうと思っています。会社がやるべきこととしてはGoogleがAMP対応するのであればそれに対応する。facebookのInstant Articlesもそうです。プラットフォームからやれと言われたことは、逆らわずにちゃんとやる。あとは公式として持てるソーシャル上のアカウントはしっかり運用しよう、とかですかね。

 

個人レベルでも、やった方が良いことはやってみるべきですよ。良いメディアであれば友達に紹介するじゃないですか。それが社外の場所に広がる。それを公式アカウントでもう1回ちゃんと拾う。これをやり続けるとリファラルが発生して、ニュースメディアやキュレーションに取り上げられて、そこからソーシャルに投稿されて…この構図を理解して経験することが大事だと思うんですよ。

 

全ての源泉になるのは会社の情報発信力とメンバーの情報発信力です。特に初期は重要です。サイトパワーも何もないなら、知られるためにいかに発信するか。もちろん僕らができているなんて思ったことはないですし、むしろまだまだ全然できていないと思っていますけど。

 

例えば、ソーシャルで訪れるユーザーとリファラルで訪れるユーザーの違いを理解できていますか?ということなんです。僕らメンバーはいくつもの仮説を持って運営しています。良いコンテンツを見つけてもらうために、どこに自分たちの顧客がいるかを知ることが大事だし、その顧客がいるプラットフォームのフォーマットに合わせて届けることが大事だと思いますね。

 

[松本] ついつい、良い内容を書けば…とか、とにかく大量に…とか、違う議論をしがちですね。

 

[飯髙] そうです。よく言われるのが「量と質、どっちが大事なんですか?」論。いやいや、どっちかって考える思考が違くて、どっちも最大限やろうよ!って思います。どっちかに依存せず、最大限の量と質を担保しなさいよという話ですよね。それができないってことではなくて、できないならどうすればできるかを思考した方がいいです。あるものでうまくやろうってことが、違うんじゃないかと。

 

[松本] プラットフォームのフォーマットに合わせて届けると言えば、コンテンツマーケティング、オウンドメディア、この2つが漫才コンビのように一緒でなければならない!という縛りも無くなってきたのかなぁ、という感じもあります。分散型という選択肢も考えられそうですよね。

 

 

 

 

[飯髙] そもそも、コンテンツマーケって誤解されていると思うんですよ。定義から考えてみれば、昔から行われている行為なんですよね。それが、たまたまこのタイミングでバズワードになってしまっているだけですよ。本来、交通広告だって「コンテンツ」マーケティングです。全ての枠組みにおいてコンテンツがありますからね。

 

「コンテンツマーケティング=コンテンツSEO」だと捉えている人が多いですよね。SEOに最適化するものがコンテンツマーケティングだと主張する人が多すぎたんだと思います。コンテンツマーケティングは全てのプラットフォームにどう届けるかが大切だと思うんですけど、その前提が広がらないままオウンドメディアブームが来てしまいましたね。

 

コンテンツ作成するとき、キーワードプランナーで検索ボリューム調べて…とかやるじゃないですか。これって検索エンジンだけ考えれば重要なことだけど、これはコンテンツマーケティングじゃない。極端かもしれないけど、今までサイト内にあったコンテンツをオウンドメディア化しただけですよ

 

で、今、分散型の方がいいのか?という話に戻すと、それは一理あると思うんです。時間軸を逃さなくなっているので、そこに向き合ってやることは良いと思うんすよ。でも、向き不向きはありますよね。例えばソーシャルメディア上でtoB系の企業が自社製品のコンテンツを動画で提供するってのは向いていないかもしれません。自分たちが扱っている製品ですごく変わってくると思うんですよ。

 

だから、どっちか?という話ではないと思います。僕は自社メディアがあること自体は大切だと思うんです。トラッキングすればユーザー属性が分かりますから。分散型に移行すると、なかなかこうは行かないでしょうね。ferretやtoBの企業であれば特にですが、1個のメディアをしっかり持って、どこかに依存しないよう調整して、ユーザー属性を把握したうえでユーザーとのコミュニケーションに役立てることが大切だと思います。

 

 

「編集長」を務め続ける素養と努力

 

 

[松本] メディアの成長を伸ばしていく源泉が「編集長」という役割ならば、どういう人が向き不向きとかってあるでしょうか?

 

[飯髙] 「変われる人」が向いていると思います。事業と一緒で、メディアを取り巻く環境って変化だらけですよ。今までの積み上げで、その成長を考えちゃう人は合わないですよね。

 

あとは「自分のポリシーを守れる人」が大事ですよね。例えばferretもこれぐらいの規模になると記事広告の問い合わせはたくさんいただきます。でも、僕のポリシーとしては良いプロダクトとしかやりたくないんです。なぜならユーザーを馬鹿にしたくないから。「今」だけを見ない。常に時間軸で考えて行動する。そのためにポリシーが必要です。

 

[松本] 変わらないためには変わり続ける努力をしないといけないですよね。たぶん編集長に限らずとは思うんですけど。本質を変えないために、いかに周囲の変化に対応できるか、その変えて良いところと変えてはいけないところをちゃんと理解できていないといけないですね。そのために、こういう努力はしたほうが良いってありますか?

 

[飯髙] 先人に学ぶ努力ですね。めちゃめちゃ本読みました。当たり前だけどマーシャル・マクルーハンやコトラーはちゃんと読破するとか。それを知ることで、今ってこういう時代なんだなってわかるんですよね。本だけじゃなく、色んな人と会うことも重要視していますね。

 

もう、あとは熱量だと思うんですよ。熱量があれば人は思考するし、成果にこだわっていけるので。やりたいと思ってやれてるかが大事なんじゃないでしょうか。そういう人って自分の時間の中でしっかりトレードオフを発生させれるし。

 

[松本] 仕事でしか向き合えないか、全身全霊かけて向き合えているか。その差は熱量に、学ぶ意識に差が出てきますよね。今日はありがとうございました!

Written by