業種によって、CVRにトレンドは現れるのでしょうか?
冬にかけて衣替えを行う分だけ財布の紐が締まったり、アベノミクスの燃費低下の影響で金融商品に陰りが出たり…つまり季節性や傾向などが業種によって現れるのではないでしょうか。
そこで今回はアドエビスに蓄積されたビッグデータを使って、特定業種の16年10月~16年12月のCVR推移(リスティング広告経由で獲得したCVに限る)を予報したいと思います。
○○坊○○坊天気予報みたく元気良くやってみましょう!(予報と言えばこれしか思い浮かばない。やっぱメロディ+ブランドって最強ですね)
特定6業種のCVR推移 中長期予報
建築・不動産、人材求人、金融・保険、EC系(食品)、EC系(化粧品)、EC系(その他)の以上6業種の長期(1年程度)および中期(直近3ヶ月)のCVR推移は以下の通りです。
建築・不動産のCVR(資料請求系)の長期トレンドは横ばいが続くでしょう。月単位では10月以降は下降圧力が強く、10月以前ほどCVRが上がらない可能性があります。
人材求人のCVR(会員登録系)の長期トレンドは緩やかな下降が続くでしょう。月単位でも特定の長期休日期間を除けば下降圧力が強く、10月以前より落ち込む可能性があります。
金融・保険のCVR(資料請求系)の長期トレンドは緩やかな上昇が続くでしょう。月単位では10月前半までは上昇傾向ですが、以降は下降圧力が強く、10月以前より落ち込む可能性があります。
EC系(食品)のCVR(購入完了系)の長期トレンドは緩やかな上昇が続くでしょう。月単位でも年末等の長期休日期間を除けば上昇圧力が強く、10月以前より上向く可能性があります。
EC系(化粧品)のCVR(購入完了系)の長期トレンドは横ばいが続くでしょう。月単位では11月前半までは下降圧力が続きますが、以降は徐々に上向く可能性があります。
EC系(その他)のCVR(購入完了系)の長期トレンドは緩やかな下降が続くでしょう。3ヶ月通して上昇・下降圧力を繰り返しますが、クリスマス商戦は大きく上向く可能性があります。
以上、CVR推移の中長期予報でした。
特定6業種のCVR推移 中長期予報の見方、作り方
表の見方について説明します。
長期トレンドとは1~2年にわたる長い傾向を指します。短期(日~週)や中期(月)では変化しない長期の傾向を指しています。したがって、長期トレンドには季節要因などは含まれません。
季節要因は、どちらかと言えば中期に反映されます。その中期は、直近3ヶ月の傾向と同義になります。
次に、この中長期予報の作り方を説明します。
アドエビスには、デジタルマーケティングに関する膨大なビッグデータが蓄積されており、こうしたデータを保存・分析する基盤が整備されています。
導入事例:株式会社ロックオン様 | Hadoopとビッグデータソリューションのリーディングカンパニー http://www.cloudera.co.jp/customers/lockon.html 数十億行にも及ぶビッグデータ分析環境を2カ月半で構築できた理由とは http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1603/31/news01.html
このデータを個人情報および企業名が特定できない・紐付けできない・復元できない形で加工して、事業領域毎に「マーケティング施策の傾向を表す統計データ」を作成しました。これを当研究所では「エビスINDEX」と命名しています。
株式会社ロックオン、国内初となる広告運用のベンチマーク指標「エビスINDEX」を発表 http://www.lockon.co.jp/release/3074/
今回はこのエビスINDEXをさらに加工して、特定事業領域群の中から個別のCVRを無作為抽出して、n=50 かつ t=1095 以上担保できた業種の中のうち6業種を対象としました。
繰り返しますが、無作為抽出時に特定企業名がわからない形で抽出、また加工までのデータはすでに削除しており、どのデータだったのかは私自身もわかりません。
そうなると、無作為抽出されたデータの中に異常値(例えばCVR1000%とか)が紛れるものですが、これは「入門 機械学習による異常検知―Rによる実践ガイド」を参考にして除去に努めました。
異常検知系はいずれ当研究所でも取り上げたいと思います。
- 井手 剛
- コロナ社 2015-02-19
最後に、約3年にわたる特定事業領域群のCVR推移のデータを、Rのstl関数を使って季節・傾向・不規則成分に分解しました。今回発表した内容は、その結果になります。
エビスINDEXとはビッグデータを基盤とした人工知能である
最初の「CVRにはトレンドがあるのか?」という疑問に対しては「ある」が解答として適切になりますが、なぜそれがエビスINDEXから解ったのかについて記したいと思います。
デジタルマーケティングに関する膨大なデータを時系列に沿って集約すると、全ての企業が網羅されているわけでは無いにしろ、業種の傾向が現れます。以下のイメージです。
※全体とは無作為抽出された50を指し、iは50まで考える
1つずつ見ると上昇傾向もあれば下降傾向もあるでしょうし、CVRのケタが違う場合もあるでしょうが、そうしたデータ群を集めていくと特定企業の「傾向」は薄れ、全体的な推移の「傾向」が浮き彫りになっていくと考えます。
これを、内的・外的動機による人間の社会的な行動の集合体だと捉えれば、エビスINDEXは人工的に開発された「社会的知能」―最近の言葉で言う人工知能に繋がると考えます。
※もちろん「知能」をどう定義するかによります(最近刊行された「人工知能とは」でも先生方の中で認識は異なるようです)。
- 松尾 豊 中島 秀之 西田 豊明 溝口 理一郎 長尾 真 堀 浩一 浅田 稔 松原 仁 武田 英明 池上 高志 山口 高平 山川 宏 栗原 聡
- 近代科学社 2016-05-30
今後、この社会的人工知能の可能性を秘めたエビスINDEXの研究を進めて、マーケティングに関する知能を持つ有能なアシスタント(ドラえもんのような!)に育てていきたいと思います。
また、この研究にご興味がある方はお問い合わせいただければ幸いです。
おまけ:直近3ヶ月の傾向について
あくまで縦軸の%を精緻に見るより、横軸への推移としての傾向を見てください。GAの数値が精緻なものではなく、取り漏れがあるから推移だけ見るのと同じ意味合いです。
真ん中の黒太線を中心に、+1σがオレンジ点線、-1σがブルー点線になります。